科学技術
科学技術を学ぶ上での羅針盤となる「人と技術」および実験・実習を基本とした科学技術関連科目「科学技術基礎」「科学技術研究入門」「科学技術コミュニケーション」のテキストです。
科学技術基礎
イベントの写真を上に追加してこの科目は皆さんに科学技術について、興味と関心をもってもらうため 設定されました。実験・実習などの実践を通し、高校段階での科学技術に関する事象を皆さんとともに、追求していこうとするものです。この科目の目標や考え 方は、以下の通りです。身近な実験・実習を通して、科学技術への興味・感心を養うとともに、理論を確認する。理科(特に物理、化学)と技術の関連につい て、知識と理解を深める。定性的学習に加え定量的考え方の大切さを認識し、その取り扱いにも慣れ る。多分野の内容を、体験を通して学習することにより、科学技術に関する広い視野を養い、基本的な知識と態度を身につける。これらの目標に向かい、実際に 身体で体験しながら、科学や技術の基礎理論を理解できるように努力してください。後期の内容についても、前期同様に私たちの身近にある基本的な事象であ り、理解しやすい内容です。科目の内容は、「力学J r 電気J r 化学J r 製図J の四分野に分かれており、具体的には、以下の通り実施します。
「力学J 分野では、熱力学や金属材料について学習し、またパネについての性質や重力加速度のを行います。
「電気J 分野では、コンデンサや半導体とダイオードなどの性質について、また、電気と磁気の関係や交流回路について学習します。
「化学J 分野では、中和反応や、分子の大きさの測定、コロイド溶液の性質について学びます。
『製図j では、相貫体模型を作ったり、柱の強さについて考えていきたいと思います。説明を記入します
科学技術研究入門
日本の大学生は、ものを覚える暗記カには優れているが、ものを生み出す創造性に乏しいと批判されがちです。また、他人とのコミュニケーションがうまくと れない学生が増えており、隣の席の人に用事を伝えるのに、メールでなければ伝えられない学生がいるという話を耳にします。自分の思ったことをはっきりと相 手に伝え、外国の研究者と肩を並べるためには、どうすればよいのでしょうか。暗記力だけで受験勉強を勝ち抜いてきた学生には、暗記以外の学習方法が見つからないのは、当然のことです。残念ながら、暗記という学習法が通用するのは 大学受験までです。この先、研究活動を続けていこうと思うならば、なくてはならないものがあります。それは「発想力」です。「発想力」のない人聞が研究活 動を続けていくには限界があります。皆さんには、「発想力」を持ち、創造的な研究ができるようになってもらいたい、そのための手助けをするのがこの科目の 目的です。私たちは皆さんには可能性があると信じています。
誰にでも発想することだけはできます。その証拠に私たちには考えない瞬間がありません。皆さんだって授業中に「今日は何を食べようか、これが終わったら どうしよう、何でこんなつまらない話を延々と50分もできるんだ」などと常に何かを思っては、いつの間にか忘れていってしまいます。このような役に立たな い発想は妄想というべきものでしょう。考えが浮かんでは消えていくのは、思考を止めることができない人聞の性でもあります。思い浮かべるものの中には、有 益な発想もあるはずです。しかし、それを活用することはなかなかできません。発想を妄想に終わらせないためには、それなりの訓練が必要です。この科目で行 うブレインストーミング(brainstorming) やKJ法などは、そのための訓練法の1つだと言うことができます。
皆さんは、このようなことは大学で勉強すればよいと思っていますか。頭が柔軟な今だからこそ、「発想力」を引き出し、有益に使うための訓練ができます。 年をとってから「やっておけばよかった」などと思っても取り返しがつきません。あらゆる自然現象を、科学に裏打ちされた技術(科学技術)を活用して論理的 に解明していく。誰が聞いても納得できるような説明ができ、文章が書ける。この科目を通じて、その力を身につけ、「課題研究」に取り組んでもらいたいと思 います。
科学技術コミュニケーション
イベントの写真を上に追加して説明をみ なさんは大努の友人に固まれて,高校生活を送っています。しかし,学校を卒業したあとでも気軽に会えるような友達は,何人いるでしょうか。気持ちが分かり 合えるような友達。一生を通じても,それほど数は多くないかも知れません。そのようなわかり合えるような友達を「刎頸(ふんけい)の友」と言います。これ は中国の戦国時代,趙での話しによるものですが,たとえ首を刎(はね)られても,後悔しないほど深い交わりを持つ友のことをいいます。望んでもそのような 友は,なかなか得られないものです。相手の気持ちが自分のことのようにわかる。自分の中にもうひとりの友人がいて,その痛みや悲しみ,喜びが直接伝わるよ うでなければ、ふんけい「刎頸」とまでは言えません。この状態を別の言葉で言えば強い共感が持てるということになります。共感は,相手が持ってくれるのを 期待するのではなく,自分が積極的に相手の気持ちを推し量れることが大切です。これこそが個人対個人のコミュニケーションの極致と言えるでしょう。
ここでみなさんにとって,身近な例を考えてみましょう。本校では季節が夏になると「文化祭についての話し合い」が,各クラスで始まります。たいていは, 食べ物を販売するか,何かものをつくるか,という二者択一に収束していきます。食べ物を作って売るのはおもしろいし,何よりも自分でもできそうだという安 心感があります。それに対して何かものをつくるという企画は,具体的にどうするのか,かなり詳細な説明をしないとわかってもらえません。企画を出した級友 は,自分ではつくれる自信があっても,大勢のクラスの仲間にわかってもらえるような説明ができるとは限りません。もともと自分の力だけでは作れない級友た ちに,具体的な説明がなければ,構想を頭に描くことすらできずに「本当に作れるのだろうか」と疑心暗鬼になってしまいます。その結果,手順や完成が容易に 想像できる食べ物を作って売る企画に賛成することになります。こうして,このクラスでもあのクラスでも,あちこちのクラスで食品を売る企画が,賛成多数と なり提案されることになります。つまり,ものをつくるという科学技術に関連した一対多のコミュニケーションが失敗したということになります。どうも「刎 頸」とはいかなかったようです。
何がいけなかったのでしょう。聞き手の中に共感を生み出すことができなかったということになりますが,どうすれば自分の考えをわかってもらえたのでしょ う。お笑いの漫才ではないのですから,そんなにおもしろおかしいわけではありません。聞き手が聞きたがっているというわけでもありません。そのような状況 で何をすれば良かったのか。1つだけ言えることは,ただ話すのではなく,聞き手の求めているものを与えることができれば結果は違っていたかも知れないとい うことです。それがドラッガーの言うマーケティングというものですが,そのための方策は?周到な準備が必要そうです。…先を急がないで,いっしょにじっく り考えてみませんか。
この授業で学んだことが,コミュニケーション力として身につき,課題研究の発表やサイエンスカフェのような場面で生かせるだけでなく,人間力としてみなさんのやる気につながることを望んでやみません。記入します
SSH科目開発(2011〜2015年)
グローバル社会と技術
「人と技術」 は「技術と文化」という科目で始まりました。それは昭和58年度~昭和61年度の研究開発のときでした。当時の平井聖校長の提唱により技術を文化の目から 見るための科目として設けられたものです。特徴は授業を数名の専門教員が横断的に担当する点にありました。そして科学技術の何が面白いのか、何が未開拓であるのか、といった事柄が分野ごとに示されました。それは現在も継承され、平成7 年度~平成9 年度の研究開発からは科目名を「人と技術」に改めました。さらに現在では正式科目として本校以外の学校でも開設されるようになっています。
もう一つの特徴は、授業そのものを主とし担当教員の創意工夫をこれに反映させる点にあります。教科書は副読本のような位置にあるわけですが、各章の授業 担当者が執筆し、年度ごとに改訂して来ました。それは科学技術の目覚しい発展に対応するためであり、同時に常に問題意識を持って科学技術と取り組むという 姿勢にもよっています。
特に「スーパー・サイエンス・ハイスクール」研究開発校の指定を受け、技術者としてのセンスを磨くことや倫理観を養うという新たな使命を担うこと になりました。そこでその目標を達成するために大幅な改訂を試みました。この教科書が中学時代に手にしたものと一味違うとすれば、そのような背景があるた めです。
ところで「人と技術」となってからの特色としては、特別講義と施設見学とがあります。前者は東京工業大学教官による最先端の授業です。当初担当者はー名 でしたが、現在では数名の異なる分野の方々のお話を聴いています。後者についてはこれまでに数え切れぬほどのところへ行きました。たとえば、川崎製鉄千葉 製鉄所・東京電力大井火力発電所・日産自動車追浜および座間工場・日本民家園・東芝科学館・川崎市浮島処理センター(ごみ処理場)・三菱自動車みなとみら い技術館・環境エネルギ一館・電気の史料館のほか、横浜みなとみらい2 1 地区の景観と保存建造物あるいは船による東京湾岸からの都市景観の観察などと多種多様です。
以上で「人と妓術」が新しい内容を含んだ科目であることは理解して頂けたことでしょう。専門の入り口にいる皆さんはこの科目を通じて「何を学ぶか」を考えるのもよく、またこの教科書から「何かを見つける」のもよいでしょう。その意味からもこの教科書が科学技術を学ぶための羅針盤となれば幸いです。
研究開発科目(1983〜1986年「技術と文化」その後継続)
研究開発科目(1995 〜1998年「人と技術」その後継続)
SSH研究開発科目(2015〜現在「グローバル社会と技術」)
科学技術コミュニケーション
イベントの写真を上に追加して説明をみ なさんは大努の友人に固まれて,高校生活を送っています。しかし,学校を卒業したあとでも気軽に会えるような友達は,何人いるでしょうか。気持ちが分かり 合えるような友達。一生を通じても,それほど数は多くないかも知れません。そのようなわかり合えるような友達を「刎頸(ふんけい)の友」と言います。これ は中国の戦国時代,趙での話しによるものですが,たとえ首を刎(はね)られても,後悔しないほど深い交わりを持つ友のことをいいます。望んでもそのような 友は,なかなか得られないものです。相手の気持ちが自分のことのようにわかる。自分の中にもうひとりの友人がいて,その痛みや悲しみ,喜びが直接伝わるよ うでなければ、ふんけい「刎頸」とまでは言えません。この状態を別の言葉で言えば強い共感が持てるということになります。共感は,相手が持ってくれるのを 期待するのではなく,自分が積極的に相手の気持ちを推し量れることが大切です。これこそが個人対個人のコミュニケーションの極致と言えるでしょう。
ここでみなさんにとって,身近な例を考えてみましょう。本校では季節が夏になると「文化祭についての話し合い」が,各クラスで始まります。たいていは, 食べ物を販売するか,何かものをつくるか,という二者択一に収束していきます。食べ物を作って売るのはおもしろいし,何よりも自分でもできそうだという安 心感があります。それに対して何かものをつくるという企画は,具体的にどうするのか,かなり詳細な説明をしないとわかってもらえません。企画を出した級友 は,自分ではつくれる自信があっても,大勢のクラスの仲間にわかってもらえるような説明ができるとは限りません。もともと自分の力だけでは作れない級友た ちに,具体的な説明がなければ,構想を頭に描くことすらできずに「本当に作れるのだろうか」と疑心暗鬼になってしまいます。その結果,手順や完成が容易に 想像できる食べ物を作って売る企画に賛成することになります。こうして,このクラスでもあのクラスでも,あちこちのクラスで食品を売る企画が,賛成多数と なり提案されることになります。つまり,ものをつくるという科学技術に関連した一対多のコミュニケーションが失敗したということになります。どうも「刎 頸」とはいかなかったようです。
何がいけなかったのでしょう。聞き手の中に共感を生み出すことができなかったということになりますが,どうすれば自分の考えをわかってもらえたのでしょ う。お笑いの漫才ではないのですから,そんなにおもしろおかしいわけではありません。聞き手が聞きたがっているというわけでもありません。そのような状況 で何をすれば良かったのか。1つだけ言えることは,ただ話すのではなく,聞き手の求めているものを与えることができれば結果は違っていたかも知れないとい うことです。それがドラッガーの言うマーケティングというものですが,そのための方策は?周到な準備が必要そうです。…先を急がないで,いっしょにじっく り考えてみませんか。
この授業で学んだことが,コミュニケーション力として身につき,課題研究の発表やサイエンスカフェのような場面で生かせるだけでなく,人間力としてみなさんのやる気につながることを望んでやみません。記入します
SSH科目開発(2011〜2015年)
グローバル社会と技術
「人と技術」 は「技術と文化」という科目で始まりました。それは昭和58年度~昭和61年度の研究開発のときでした。当時の平井聖校長の提唱により技術を文化の目から 見るための科目として設けられたものです。特徴は授業を数名の専門教員が横断的に担当する点にありました。そして科学技術の何が面白いのか、何が未開拓であるのか、といった事柄が分野ごとに示されました。それは現在も継承され、平成7 年度~平成9 年度の研究開発からは科目名を「人と技術」に改めました。さらに現在では正式科目として本校以外の学校でも開設されるようになっています。
もう一つの特徴は、授業そのものを主とし担当教員の創意工夫をこれに反映させる点にあります。教科書は副読本のような位置にあるわけですが、各章の授業 担当者が執筆し、年度ごとに改訂して来ました。それは科学技術の目覚しい発展に対応するためであり、同時に常に問題意識を持って科学技術と取り組むという 姿勢にもよっています。
特に「スーパー・サイエンス・ハイスクール」研究開発校の指定を受け、技術者としてのセンスを磨くことや倫理観を養うという新たな使命を担うこと になりました。そこでその目標を達成するために大幅な改訂を試みました。この教科書が中学時代に手にしたものと一味違うとすれば、そのような背景があるた めです。
ところで「人と技術」となってからの特色としては、特別講義と施設見学とがあります。前者は東京工業大学教官による最先端の授業です。当初担当者はー名 でしたが、現在では数名の異なる分野の方々のお話を聴いています。後者についてはこれまでに数え切れぬほどのところへ行きました。たとえば、川崎製鉄千葉 製鉄所・東京電力大井火力発電所・日産自動車追浜および座間工場・日本民家園・東芝科学館・川崎市浮島処理センター(ごみ処理場)・三菱自動車みなとみら い技術館・環境エネルギ一館・電気の史料館のほか、横浜みなとみらい2 1 地区の景観と保存建造物あるいは船による東京湾岸からの都市景観の観察などと多種多様です。
以上で「人と妓術」が新しい内容を含んだ科目であることは理解して頂けたことでしょう。専門の入り口にいる皆さんはこの科目を通じて「何を学ぶか」を考えるのもよく、またこの教科書から「何かを見つける」のもよいでしょう。その意味からもこの教科書が科学技術を学ぶための羅針盤となれば幸いです。
研究開発科目(1983〜1986年「技術と文化」その後継続)
研究開発科目(1995 〜1998年「人と技術」その後継続)
SSH研究開発科目(2015〜現在「グローバル社会と技術」)